2次試験カウントダウン日記 #残38日

 

そもそも、ネメヒンとは安らぎと希望に満ちた睡眠を民にもたらすための魔法であり、TS作用はこの魔法の本質ではなかった。

 

 

当時、その国ではあらゆる分野で革命が起き始め、人々の生活は輝かしいスピードで豊かさを増して行き、それと同時に殆どの人が毎日のように身を削って尽力して行く地獄のような競争社会が形成されつつあった。

 

そのような社会の中で、精神的な面から睡眠障害をきたす者が現れてゆくのは当たり前のことであり、身を粉にするような労働、勉強をまた強いられ、もしかするとその場で「役立たず」と烙印を押され射殺されてしまう、そんな絶望の「明日」へ自分はまた導かれてしまうという圧迫感からベッドの中で逃れることができず、人々の中で「睡眠」というものは、もはや拷問のような「恐怖」というイメージがまとわりついていたのだった。

 

そこで立ち上がったのが、大魔道士ネメヒンである。

といっても当時、大魔道士ネメヒンは全くの無名であり、まだ自分オリジナルの固有魔法を一つも持ち合わせていない青二才であった。

 

しかし、魔法錬成の際に思わぬ才能を開花させ、理想の睡眠作用魔法をあっけなく完成させることができてしまったのである。

 

はやる気持ちを抑えながら、青二才ネメヒンは完成したばかりの魔法を早速民のもとへ供給すべく、市場や教会などを回り歩き、自分の魔法を使ってもらえるよう声を掛けた。

 

が、しかし…

全く無名の魔法使いに耳を貸すものなど誰もいなかった。それどころか「一度魔法を浴びればあの世送りにされそうだ」「工場で俺達を使い潰すために洗脳作用も練り込まれてるに違いない。あいつはグルだ」などと悪評が広まるばかりであった。

 

ネメヒンは困り果てた。このままでは民を救う魔法を誰も受け入れてはくれない。

 

 

そこで、閃いた。

彼はルーア・オルタの手を借りるために、彼女のもとへと急いだ。

この魔法のオーパーツは、きっとそこにある。

 

 

 

 

 

また明日!(続かない)